『人生いつでも花開く―夢は叶うもの　叶うものと思い続けるもの―』ヒロコ・ムトー　著

諦めずに夢や希望を持っていればきっと叶うというメッセージ

　本著の主人公、武藤正子ことマサコ・ムトーは大正２年に福岡県門司に生まれ、３歳から山口県下関に住むようになります。幼少の頃から海外貿易の要所であった門司港・下関港の二つの新風に触れ、やがて、プロテスタント系の梅光女学院の中で、自由な精神と真っ直ぐな気骨が育まれていきました。
　しかし大正２年生まれの女性が、結婚生活や子育ての最中に羽ばたく自由などありません。結婚初日に「物言わぬ馬鹿となれ」という姑の言葉を守り続けて50年を過ごした正子は、夫が亡くなった70歳の時に、次のように記しています。

　「私の人生はこれからです
　　自分の言葉を言っていいなんて
　　なんて自由なんでせう！」

　70歳で通い始めたパステル画教室で、片目の視力は失明し残る片目もぼんやりとしか見えない状態の中で描き続けた作品は、78歳の時の一回目の個展で「心で描いている」「心の色だ」と絶賛され何紙もの新聞に取り上げられました。
　その後、大腸癌、肺水腫、心臓、腎臓、骨折など入退院を繰り返しますが、「おばあちゃんの作品をもっと見たい」という声にマサコ・ムトーは、大きな作品は描けなくなりましたが、指先の感覚だけで、昔の生活や忘れ去られていく大正昭和の日本の風景を思い出しながら、手のひらに乗るような小さな豆紙人形を作り始めたのです。

　「今、自分にできること」と生み出した素朴で愛くるしい豆紙人形は「宝石の輝きのようだ！」と称賛され、病気にめげることなく何度でも立ち上がり新しいことに挑戦し、88歳の豆紙人形作家として世の中に認められ、見事な大輪の花を咲かせたマサコ・ムトーの姿は人々に感動と励ましを与えるのでした。

　「夢は叶うもの、叶うものと思い続けるもの」

　本書『人生いつでも花開く』のタイトルから、この物語は、「老後をどう生きるか」というだけではなく、再び人生が、「いつからだって新しく始められる」ということに気づきます。

「失敗なんてたいしたことではありません
　失敗くらいで死にはしませんから」

「今が始まり
　今日が始まり
　今日を悔いなく生きていれば
　何があっても怖くない」

「大したことじゃない！
　大したことじゃない！
　大したことじゃない！
　三度唱えれば 　たいていのことは　そうなります」

「夢と希望は生きる力です」

　夢や希望を抱き、その夢や希望を保ち続け、前を向いて生き抜く中で、小さな一つから始めても必ず、夢や希望は叶うものでしょう。

　本書は、今から新しいことを始めるのは無理だと諦めかけている多くの人、若い人、もう歳だからと考えている人にとって、人生の乗り越え方、人生の歩き方のノウハウを教えてくれる力があります。

目次（紙の本版）

カラーページ（作品紹介）……1

プロローグ　16

第一章　光り輝く少女時代　27

門司港の歩く日本人形　28
大丈夫。心配ない。大丈夫！　32
梅光女学院のお転婆娘　37
お詫びのお饅頭　40
飛んでみいや正子ちゃん！　42
許された悪ふざけ　45
校則違反の常習犯　49
初恋の約束　信仰への目覚め　53
夢を捨てず、いつまでもあなたらしくあれ　59

第二章　長い長い冬眠時代　65

苦難の始まり　66
お嬢様の女中奉公　69
物言わぬ花嫁　75
魅力ある明治バンカラ男　84
男は「あれ」ですけん　88
鉱山男の気概と正義　92
三年過ぎたら引っ越し準備　95
愛と懺悔の結婚生活　99

第三章　人生　遅すぎることはない　111

こんにちは　私の自由！　113
七十の手習い　117
七十八歳―― 初めての個展　124
夜明け　136
神様をいつも身近に感じます　137
雲日記　140

第四章　八十八歳の豆紙人形作家　147

八十八歳の豆紙人形作家　マサコ・ムトー誕生　148
終わりからの始まり　157
世界に羽ばたく豆紙人形　160
パリの奇跡　エスパス・ジャポン展　170
夢の日本文化会館・アンコール展　181
神の御許へ　193

エピローグ　200

後書き　216

　正子年譜　25
　参考文献一覧　219
　門司港駅寄贈リスト一覧　220
　登場人物一覧　222

※電子書籍版：画像フルカラー、画像追加、キャッチコピー追加等あり

子供の遊びや懐かしい風景……25点

「踊りの稽古」「ものおもひ」「手鞠」「子守り」「竹馬」 「一人縄跳び」「けんぱ」「後ろの正面だあれ」「お茶のお点前」「かまくら」 「ごきげんよう」「姉妹」「さあ、釣れたぞ！」「ホタルこい」「通りゃんせ」「夏の夕暮れ」「ちょっとそこまで」「竹馬」「仲良し」「うたたね」 「線香花火」「鞠つき」「あら恥ずかしい」「子守り」「いそいそ」

聖書物語……16点

「ノアの箱舟」「ルツとナオミ」「ヤコブの夢」 「モーゼの誕生」「モーゼの十戒」「モーゼ紅海を渡る」 「受胎告知」「キリストの誕生（馬屋にて）」「キリストとザーカイ」 「イカルノの井戸（キリストと娼婦）」「キリストの奇跡（信ずれば大漁）」 「キリストの奇跡（二匹の魚と五つのパン）」「石打の刑」 「最後の晩餐」「キリストの再誕」

戦時中の風景と懐かしい思い出……12点

「竹槍訓練」「千人針」「学徒動員（飼葉集め）」「買い出し」 「戦時中の小学生」「門司・めかり神社の儀式」「めかり神社の神主」 「藤娘」「翁と媼」「盆踊り」「かごめかごめ」「庭掃除」

女性の髪型の変遷（大正初期から昭和初期まで）……21点

大正時代……「髪結いさん」「女中さん」
大正初期……「お嬢様のおかっぱ」「カチューシャスタイル」「二百三高地まげ」
大正・昭和初期……「嫁入り前の髪型　（ゆいわた）」「高島田」「娘さんの桃割れ」「娘さんのおさげ髪」「丸髷」「丸髷もどき」
大正中期……「九条武子夫人の髪型」「洋髪もどき」「工場現場の女性」
昭和初期……「ブランコスタイル」「お団子スタイル」「社交まげ」「耳隠しまげ」「モダンガール髪型」「フェルシタ夫人の髪型」
江戸～昭和中期まで……「花魁とかむろの髪型」

東海道五十三次（最後の作品）……5点

「さあ、出発だ！（日本橋）」
「ちょっと一休み（戸塚の宿）」
「茶摘み」（静岡）」
「鵜飼い（長良川）」
「やっと着いた（京都）」