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学校訪問記 vol. 10 横浜市立日吉台西中学校

2008年11月26日(水)「横浜市立日吉台西中学校」

横浜市立日吉台西中学校の皆さんと心の宅急便メンバー

「横浜市立日吉台西中学校の皆さんと心の宅急便メンバー」
左から二番目 志村校長先生
一番右    笠井先生

「いやあ、何回聞いてもこの話は面白くて笑ってしまいます。本当にムトーさんは傑作な方ですよね。いやいや、楽しい!」
昨年に引き続き、今年も「心の宅急便」を呼んでくださった日吉台西中学校・志村由紀夫校長先生はお会いする度にこの話になり、柔和な顔をほころばせ膝を叩いて楽しそうにお笑いになる。
志村先生は今春、日吉台西中学校に赴任なさった校長先生。昨年の「心の宅急便」の感想を先生方や生徒たちからお聞きになって「僕も聞きたい!」と今年の人権講演予定に組み込んでくださったのだ。
「はい。滅多にいないドジな母親なもので・・・・恐れ入ります」
ボリボリと頭を掻きながら応える私を、副校長の白倉晶子先生が、ハッハッハ!と眼鏡の奥の目を細めて笑っていらっしゃる。
「まあ、でも、ムトーさんの勘違いのおかげで、こうして我が校に二度も来ていただくことになったのですから」と、志村先生のやさしいフォローに、校長室の笑い声が一段と高まった。

この勘違いとは、私がこともあろうに娘二人が卒業した中学校の名称を、ただの「西中」と思い込んでいたことである。
昨年10月、白倉先生が突然お電話をくださり、日吉台西中学校で「心の宅急便」をやって欲しいと依頼して下さった時、私は何故か日吉本町にある通称「台中」と勘違いしてしまったのだ。
ただの「西中」と思い込んでいた娘たちの母校は、我家から歩いて7分の坂上にある。あまりにも近場という抵抗感もあったが、なまじ娘たちの母校であることと、講演の中で次女のいじめ体験を語っていることから、勝手な理由ではあるが、もしお声をかけていただく機会があってもお引受しない方がいいのでは・・?と思っていた。
だが「覚えていますか?美樹ちゃんの担任だった白倉です。ずっと日吉を離れておりましたが、今年から日吉台西中学校に転任して参りました」と懐かしいお声でお電話をいただいた私は、懐かしさのあまりすっかり頂いたお電話で話しこみ、「はい、喜んでお引受します」と答えていたのだった。まさか日吉台西中学校が「西中」とは思わずに!
白倉先生は長女が中学二年生の時の担任で、大変お世話になった大好きな先生である。その白倉先生に頼まれて断れるはずがない。<台中も近場と言っちゃ近場だけど、知っている人は誰もいないから、ま、いいか・・・> と、私は自分に言い聞かせた。

その一ヵ月後、講演打ち合わせのため私は日吉台中学校(なんとその時点では、講演依頼を受けた日吉台西中学校と信じ込んでいたのである)の駐車場に車を停め、職員室に向かった。この学校を訪れるのは初めてだが、日吉の駅に向かう道路沿に正面玄関があるから場所は知っている。生徒数の多い大きな学校だ。
職員室に入り、白倉先生と人権担当・高安先生の名前を告げた。
応対に出た先生は「ハ?」と不審な顔をなさっている。
「白倉先生も、高安先生もいらっしゃいませんが・・・」
その戸惑ったような表情に私も「ハ?」と同じ顔を返したに違いない。
「あの・・・4時に打ち合わせということでこちらに伺ったのですが」
「はい。でも、お二人はこの学校にはいらっしゃいません。他の学校とお間違えでは・・?」
「・・・・?!」
じゃあ、私は何処の学校と間違えたのだろう?
「あの・・・ここは台中ですよね?」
「はい。台中です」
「白倉先生も高安先生もこちらにはいらっしゃらないのですか?」
困ったような顔をなさったその先生はこう言った。
「多分、日吉台西中学校の先生じゃないかと思うのですが・・」
「はい。日吉台西中学校と伺っております。ここは違うのですか?」
私は混乱した。では、ここはなんと言う学校なんだろう?
「ここは 日吉台中学校と申します」
そこまで聞いて初めて私は自分が場所を間違えたことを知った。それなら、日吉台西中学校は一体何処にあるのだ?
その段階でもお馬鹿な私は日吉台西中学校と「西中」が同じ学校だということに気がついていなかった。
「すみません。では日吉台西中学校へ行く道を教えていただけますか?」
そう言って説明を受けている間に私は重大な勘違いをしていたことに気がついた。なんと、その学校がある場所は、娘たちの母校、「西中」ではないか??!!

「信じられなーい!!ママ!自分の娘二人を卒業させて、その母校の正式な名称を今まで知らなかったの?」
後で娘たちにその話をしたら、散々呆れられ怒られた。
そんないきさつから始まった初回の日吉台西中学校であるが、一旦、内情がバレテしまったらもう怖いものはない。なんせ娘たちの「母校」なのだから!
「ムトーさん、何か必要なことがあったら何でもおっしゃってください。近いんですから、いつでも西中を使ってください」と言ってくださる白倉先生に甘えて、あれから何度駆け込んでお世話になったことか!
今年の夏、「心の宅急便」の朗読の中でスクリーンに投影するイラストをDVDの動画に切り替えることになった時も、それが今までのようにPCから同じ方法で投影できるかどうか分からず白倉先生に相談したところ、「丁度 お盆で部活の生徒たちが体育館を使用しない日があります。その日にいらしてください。そこで練習してみてください」と親切な提案をしてくださった。おまけに、PCなど機械関係が強い数学の笠井裕邦先生をお手伝いに頼んでくださったのである。
夏休みのど真ん中、8月15日、じっとしていても汗が滴り落ちる猛暑の午後、2時から4時半までの二時間半、スクリーン操作の原田さんと笠井先生はどうやってもスクリーンに投影できないDVDと汗だくで格闘していた。私の持っているDVDに何やら問題があるらしく、通常の方法でなかなかスクリーンに再生できないのだ。
だがそこは近場の強み、早速私はひとっ走りして我家に戻り、別バージョンのDVDを持ってきた。が、それも学校にあるDVD再生機ではスクリーンに投影出来ない。
「どうしよう・・?動画を流すのは止めようか?」と原田さんと相談すると
「これ、僕が家に帰ってPCに取り込んで、PCから画面に再生できるようにしてあげましょう。それなら何処の会場に行っても楽に操作できますから」
笠井先生がご親切な提案をしてくださった。白倉先生といい笠井先生といい、なんていい人なんだろう!
お言葉に甘えてプロジェクターや椅子や机をしまいかけた時「暑かったでしょう?これをどうぞ!」と白倉先生が冷たく冷やした飲み物を持って来てくださった。感謝!大感謝!

「アーッ、去年、心の宅急便で来た人だー!」「ほんとだー!」
白倉先生と笠井先生にお礼を告げて学校を出ようとした時、校庭で練習していたテニス部の生徒たち、男女十人ほどが大きく手を振ってこちらに駆け寄ってきた。
「えー?!覚えていてくれたの?嬉しいなあ!」
「心の宅急便」では着物で講演しているから、普通のラフなパンツスース姿では分からないと思ったのに声をかけてくれて、思わず嬉しさに私の声が弾む。
「覚えてるよー!今日は何で来たの?」
と口々に聞かれ「今年ね、11月に又 心の宅急便で来るよ」と答えると、「ほんとー!嬉しい!待ってるからねー」と可愛い声が返って来た。
心の宅急便は、学校を訪れるたびこんな子供たちの可愛い姿に触れ合うことができる。
こんな場面をいただけるのも「心の宅急便」を始めたからだ。やってよかった!と心から思う瞬間である。
 その後も新しいスタッフのスクリーン操作練習の場を宿直の夜に提供して下さったりと、白倉先生には何度もお世話になった。もう白倉先生のお家方向に足を向けて眠れない。

そんなこんなで通ううちに娘の母校どころか自分の母校のように身近になった日吉台西中学校に、今日は二度目の「心の宅急便」をお届けする日だ。
朝から快晴!昨日も明日も雨だと言うのに、今日だけ快晴!
今年度の「心の宅急便」は何故かいつでも晴れる。雨の予想の日でも、学校に着く時には晴れている。不思議だ。昨年度は毎回雨で、晴れの予報の日まで雨だった。最後の学校は雪まで降った。その前後の日は両方ともピーカンだったのに・・・。
今回の晴れ続きの天候は、多分今年度からパートナーになって演奏してくださるハープ奏者の長村美代子さんが「大晴れ女」なのだろう。楽器を運びこむのに雨は禁物だから。
しかも今日は曲目の関係でいつものアイリッシュハープではなくグランドハープを使用することになっている。
「晴れてよかったねー!」とスタッフ全員で大喜び!

学校は二年続けて同じ演目で訪れることは出来ない。日吉台西中学の今年のプログラムは、昨年のいじめをテーマにした「あなたがいい」と“やる気さえあれば 何でも何時でもできる”ことをテーマに88歳から豆紙人形作家になった母の話しではなく、生まれながらにして盲目の「野良猫ムーチョ」の一生と、心の平安を求めて町から町へと流れ続ける「〜さすらいの野良猫たち〜STRAY CATS」を読み、生きること、そして家族愛などを朗読講演させていただいた。
顔も見知ってきた子供たちが、身を乗り出すようにして床に座って真剣な表情で聴いてくれる。伝わっている、届いているという感触は、どの学校に行っても本当に嬉しい。
又、今回はゴージャスに長村さんのグランドハープ演奏コーナーがある。
イギリス民謡「グリーン スリーブス」そしてハープ用に作曲された「ペダルの休日」と二曲続けての美しい演奏に生徒も先生方も、傍で聴いている私もうっとり!
三曲目「夜の歌」は、ハープの特徴を生かした「ハーモニックス」や「グリッサンド」をふんだんに取り入れた現代曲で、次から次へと重なりあって流れてくる不思議なメロデイーの競演が体育館にいる全員を魅了した。
講演が終わった後には、吹奏楽部の女の子たちがグランドハープを間近に見て触りたくて群がってきた。この子たちの中から、もしかしたら今日の演奏を聴いて触発され、将来のハーピストが出てくるかもしれない。そう思わせるほどハープの音色は子供たちに届いたのではないだろうか?
「ハープの音色がムトーさんの声を柔らかく包んで、まるで声とハープが一体化しているように聞こえました」
「心の宅急便」から生まれたメッセージソング「あなたがいい」と「友だちにならない?」を選択の音楽の授業で教えてくださる込宮順子先生が近づいて来てこう言ってくれた。
「嬉しいー!」とまるで先生にほめられた生徒みたいに私はピョンピョン飛び上がって込宮先生の手を握った。
「子供たちの顔を見ましたか?最高です!あんなに長い時間、あんなに真剣に聴いていて・・・よかったです」
講演が終わった後の校長室で志村校長先生から過分なお言葉をいただき、心の宅急便一同、嬉しくてニコニコ。
午後からの出張なのに、出かけるギリギリの時間まで「心の宅急便」の準備万端整えてくださった白倉先生はいらっしゃらなかったが、授業に引っかからなかった笠井先生と志村校長先生にご一緒の写真を撮らせていただいて日吉台西中学校を後にした。

志村校長先生、白倉先生、笠井先生、高安先生、込宮先生、音響を手伝ってくださった小川先生、そして重いハープを運びこんでくださった笹嶋先生、用務員の北山さんそして日吉台西中学校の全ての先生方ありがとうございました。それから、「又 来てねー!」「毎年来てねー」と手を振ってくれた「西中」の皆さん、ありがとうー!!

追記  日吉台西中学校の概要や教育方針などは初回の「学校訪問記 Vol.2」に掲載されておりますので そちらをご覧ください。

横浜市立日吉台西中学校の公式サイト


                                                                                                                         
 
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