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学校訪問記 vol. 13 小布施町立小布施中学校

2008年12月5日(金)午後 「小布施町立小布施中学校」

小布施町立小布施中学校の皆さんと心の宅急便メンバー

「小布施町立小布施中学校の皆さんと心の宅急便メンバー」
前列右から山崎智之先生、北川原理恵先生
二列目一番左 市村多喜子さん、右から小布施町教育委員会の江本聡さん、竹前傅藏教頭先生
      久保田博校長先生、小布施教育委員会市川和恵教育長

栗ガ丘小学校から、東に徒歩10分ほどの所に小布施中学校はある。ここは、地域に一つの小学校と中学校なのだ。栗ガ丘小学校も時計台のような三角屋根が印象的なガラス窓が多い素敵な建物だったが、小布施中学校は「ここが公立中学校?!」と思わず疑いたくなるほど素敵な建物だ。
素敵な三角屋根の下にガラス張りの三角に胸を突き出した二階正面校舎、その下になだらかな半円のカーブを描いて三角の笠のように広がっている緑のスレート屋根。その屋根を小さなタイルを敷詰めた丸く太い支柱が何本か支えている。そしてその奥にホテルのドアにも似た重厚な金属枠に縁取られた重いガラスドアのエントランスが控えている。
正面玄関から左手にある「鳳凰アリーナ」と呼ばれる屋内体育館に伸びた二階の長い渡り廊下は、床から天井までガラス張りである。まるで何処かのミュージアムを思わせるような洒落た建物だ。
多目的ホールとして使用されている「鳳凰アリーナ」は、小布施が生んだ日本画の大家・中島千波画による林檎林図柄の豪華絢爛たる緞帳が設置され、電動音響反射板をセットしたステージ、音響設備が整ったオーデイオルーム、スポーツ観戦席、又は演奏会等の客席としても充実した空間を持つ。今日の午後は2時45分からここで「心の宅急便」講演となっていた。

小布施中学校写真

昼食を終えて正面玄関から入り、客用のスリッパを探していると、一人の男の子が近寄って「スリッパをお探しですか?」と訪ねた。
「はい」と答えると、「ちょっとお待ちください」と言って走り去り、すぐに籠一杯に入ったスリッパを持ってきた。先生に言いつけられて運んで来るのではなく、学校に客が来たら、その場にいる誰かが声かけをして手助けをすることが自然に備わっているのだ。小布施の人々が旅人に接する態度と全く同じなのである。
「気持ちいいわねえ・・・こんな風にされると嬉しくなっちゃうわね」
と気持ちホカホカのままトイレに行くと、丁度生徒たちがトイレを掃除している時間帯だった。
全員、ジャージ姿に着替え、頭に日本手ぬぐいをきちんと巻いて“無言清掃”をしている。
この学校の基本三本柱「花作り」「合唱」「清掃」の一つなのだ。清々しいまでに黙々と働いている。自分たちが汚したものは自分たちの手で!これをやっている学校が日本全国探して何校あるのだろう?
お人形の設営やスクリーンの準備前に校長先生にご挨拶に行き、昨日のくるみパンのことやスリッパ、無言清掃など、小布施でのこうした子供たちの「客を迎える心」に感動した話をすると、久保田博校長先生は「いやあ、うちの子たちは本当にそうなんですよ。学校でやかましく言わなくても家庭でちゃんとこうした躾ができているのでね」と嬉しそうに顔をほころばせた。
「市川教育長からもムトーさんのことを色々伺っておりますが・・・」とここでも市川先生が「心の宅急便」のことを昨年から一生懸命ご推薦くださったお話を伺った。
「実は今回、小布施中学にとって、この講演はとてもタイムリーなんですよ」と久保田校長先生が切り出した。
「友だちにならない?とあなたがいいのメッセージソング、この歌にある言葉をまさに伝えたい子供たちが何人かいるのです」
小布施中学も、「友だちにならない?」の作詞をしたゆきちゃんの学校と同じ地域に一つの小学校と中学校である。こういう状況の中ではいいこともそのまま持ち上がるが、悪いことも同じように持ち上がり、その中から抜け出るのが難しいと言う問題点を含んでいる。人間関係がうまく行かなくなった時、それをどうやって乗り越えさせてあげるか、どうやって問題が深くなる前に食い止めるか・・・?どうやって教師が生徒の心を察して手助けできるか・・?それが学校の課題なのだそうだ。
「ですから、今日の講演は心からお待ちしておりました」
そうおっしゃってくださった久保田校長先生のお言葉を胸に受け止めて私たちは体育館に準備に向かった。

「ヒロコさーん、よかった!議会、やっと終わらせて抜けて来れました!」
体育館で待ってくださっていた市川和恵先生が駆け寄って来た。ここのところ連日の議会で、小学校の講演はどうしても議会を抜けることが出来なかったが、中学校の講演と明日の「北斎ホール」での小布施町民対象の「心の宅急便」講演は、何が何でも出席するつもりだったと言う。
昨日も町役場で「久し振りー!!」と互いにハグし合ったのに、又懲りずにハグし合っている姿に多喜子さんが傍でアハハと笑っている。多喜子さんは女性にしておくのは惜しいような器の大きい素敵な女性だが、市川先生も教育長とは思えないほど若くて素敵な先生だ。優しい声、静かな語り口、柔和で女らしい顔立ちに似合わぬ行動力、小学校の校長という現役時代に定年を待たずして教育長になられたのもそのお人柄からだろう。
「市川先生、ありがとうございます」
私は深く頭を下げた。昨年の夏、あることがきっかけで突然思い立ち11月からスタートした「心の宅急便」である。昨年の9月にお会いした段階ではまだ始まってもいない海の物とも山の物とも分からないこの活動を、初めて会った私の意を汲み取ってくださり、一年後に繋げて小布施に呼んでくださった先生だ。少しでも小布施の小学校、中学校のお役に立たなければ申し訳ない。
「栗ガ丘小学校の吉越校長先生から、子供たちがとても感動していたとご報告のお電話がありましたよ」と市川先生が言った。
「朗読に、お話に、ハープに、お人形に、子供たちがとても喜んでいたそうです。“心の宅急便”ありがとうございますとお伝えくださいとのことでした」
とんでもない!と思った。この一年間を振り返ってみて、私たちが子供たちに届けたものよりも、子供たちから私たちがいただいたものの方がずっと大きい。そして今日は「友だちにならない?」の大合唱!ありがとうのお礼を言わなければならないのはこちらの方である。

「そろそろ、舞台の方に・・」の声に、私と長村さんは舞台に、原田さんはアリーナの客席の前に設置したPCの前に座った。
「心の宅急便の皆様に贈る歌」と司会の山ア先生の声がしたと同時に、スラリとしたまだ女子大生のように若い先生が舞台の中央に出てきて始まりの合図を始めた。
「あなたがいい」のイントロが鳳凰アリーナに大きく流れ、その先生の指揮の下、小布施中学の全校生徒341名が「あなたがいい」を大合唱し始めた。制服のネクタイをきちっと締め、襟元を正し、背筋を伸ばし、手には楽譜を持ってまっすぐに舞台を見て歌う小布施中学の生徒たち、全員真っ黒な頭、長髪もなく、茶髪もなく、制服の乱れもなく、昔、日本にいた中学生がここにいた。

♪♪  あなたは今 信じる友がいなくて 一人悲しみの穴倉の中
     人に会うのが怖くて 外に出るのが辛くて
     ただ みんなから 背を向けている

     でもさ 人生は色々あるのさ
     誤解 裏切り 失敗だらけ 誰でもあるよ
     でもさ 人は皆それを乗り越えて生きていくのさ
     そして前よりずっとずっと強くなれる

     あなたに贈りたい言葉があります
     誰よりも 誰よりもあなたがいい
     あなたに贈りたい言葉があります
     世界中の誰よりも あなたがいい   ♪♪

「あなたがいい」、もし、自信を失って悩んでいる子供たちがいたら、この言葉を子供たち一人一人に届けたくて、この一年間歩んで来た思いが胸に熱く込み上げてくる。スクリーン操作の原田節子さんに支えられ助けられ、演奏もレインステイック奏者の卑弥呼さんからハープ奏者の長村美代子さんに替わり、大学時代の友人、栗山泉さんの参加を得て、又、その他の友人たちの助けを得て歩いてきた一年間だった。私一人では子供たちに届けることが出来なかった「心の宅急便」は、今年は小布施の三講演で終わる。
感慨深い中で「友だちにならない?」の大合唱を続けて聴いて、合唱って、なんて素敵なんだろう?と又思う。心が一つにならなければ言葉も一つにならない「合唱」、言葉に意味がなければ、決して皆の想いが一つにならない「合唱」・・・・「あなたがいい」と「友だちにならない?」のこの二つの言葉だけでも子供たちに届けることができたなら、私が「心の宅急便」を始めたことも、歩いてきたことも意味を持つことができる。
少しずつ、少しずつでもいい、来年も、一人でも多くの子供たちにこの二つの言葉を届けたいと思う。そして、目や足の不自由、度重なる病魔にも負けずに88歳から紙人形を作り始めた母の生きる力や精神力、そして忘れられた日本の心を描いた母の豆紙人形を子供たちに届けて行こうと思う。

「心の宅急便」の講演が終わった後、久保田校長先生が生徒たちに私の想いを代弁するような感想を生徒たちに述べてくださった。久保田校長先生、ありがとうございます!
お忙しい中を合唱指導してくださった北川原理恵先生、ありがとうございます!
「今、この歌は子供たちに必要と感じました」と言ってくださった言葉、忘れません。
ビデオ撮影、PCや音響、プロジェクターとお世話くださった林先生、ありがとうございます!小布施中学の全ての先生、ありがとうございます!
そして 素晴らしい歌声をくれた小布施中学のみなさん、ありがとう!!
メリークリスマス!&ハッピー ニューイヤー!!

小布施町立小布施中学校の公式サイト


                                                                                                                         
 
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