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学校訪問記 vol. 14 杉並区立井荻小学校

2009年02月13日(金)「杉並区立井荻小学校」

写真(心の宅急便メンバーと井荻小学校校長先生&副校長先生&PTA会長)

「写真(心の宅急便メンバーと井荻小学校校長先生&副校長先生&PTA会長)」

2009年、年明け一番の「心の宅急便」は、JR西荻窪駅から徒歩15分、善福寺川流域に広がる閑静な住宅街と、アンティークショップなどが連なる西荻窪駅周辺の商店街からなる落ち着いた学区域に位置する井荻小学校だ。

井荻小学校は、昨年11月、杉並区PTA連合協議会研修会で「心の宅急便」を講演したことからP協執行部役員の一人、井荻小学校のPTA会長を務めていらっしゃる高橋裕美さんが東海林孝吉校長先生をご紹介くださったのである。

先月末、高橋さんと共に井荻小学校を訪れて東海林校長先生、石川昇副校長先生と今日の段取りや時間の打ち合わせは済ませていた。あの日は朝から雨がザーザー降りで、高橋さんが「当日、こんな風な雨にならないといいのですが・・私、雨女なもので」と心配していたが、何故か昨年から「心の宅急便」は現場で傘をさすような雨に見舞われていない。雨の予報の時でも、荷物を運びこむ時には上がっていたりする。何時までこれが更新できるか、メンバー全員、不思議がったり面白がったりしている。

12時10分前、井荻小学校に車で到着し、講演会場の新校舎前まで校長先生と副校長先生が車を誘導してくださり、楽器やお人形の荷物などを運び込んだ。

井荻小学校は、旧校舎と新校舎を繋ぐ渡り廊下の下を、善福寺池を源流とした善福寺川が流れているなんとも粋な風情だ。校内を流れる川の上には、子供たちが落ちないような配慮から作られたのだろうか、樹齢40数年の立派な藤棚の枯れた枝が川面を覆っているが、初夏にはこの藤棚が満開の紫の雅な姿で子供たちの目を楽しませるのだろう。

今回は今春卒業する6年生の道徳授業の一環で「心の宅急便」はお声をかけていただいた。2クラスで46名の6年生、その保護者・教職員・地域の方など合わせて100名弱の方にお届けする朗読講演である。時間的には午後の2時40分から一時間の講演であるが、豆紙人形の展示など、他の学年の児童にも見ていただきたいことから、早めに来ての設営である。

新校舎の二階にある図書室の机の上に豆紙人形を全員で展示して、その後校長室に向かった。12時から、私たちも校長室で早めのお給食をいただくことになっていた。

昨年9月に「心の宅急便」をお届けした杉並区立第八小学校でも美味しいお給食をいただいたが、今日も又 見た目もお味も食欲をそそるメニューである。

写真(給食)

人参、わかめ、豆腐、小松菜、玉ねぎと色鮮やかに具沢山の“わかめスープ”、豚肉、椎茸、青梗菜、筍、大根、生姜の入った栄養たっぷりの中華あんが添えられた卵炒飯、デザートには杏仁豆腐と牛乳。

私たちが子供の頃には考えられないメニューである。

日本の給食の歴史も100年を越えたそうだが、最近は小麦粉の価格の急騰もあり、パンよりお米がメインの給食が増えたそうだ。そうは言え、子供たちは白いままの御飯は苦手だそうで、どうしても炒飯など、味付け御飯が多くなっているそうだ。苦手と言えば、お魚メニューも苦手らしく「秋刀魚のかば焼きなど骨付き魚やサワラなどの焼き魚はよく残すんですよね。今の子供たちは贅沢に育っていますから・・・」と校長先生が悲しそうにおっしゃる。そのお顔がなんともおやさしい。

東海林(トウカイリン)先生は、山形の出身。一般的に知られている「ショウジ」という呼び方ではなく、この「トウカイリン」と呼ぶ名前は全国で山形だけだそうである。私も10歳まで山形に住んでいたことから、なんだか一層親しみを感じてしまう。

とても物静かで温厚な東海林先生であるが、子供の頃は信じられないくらいヤンチャな男の子だったそうだ。「あのヤンチャなあなたが先生になるなんて・・?!」とお母様がびっくりなさったとか。

きっかけは5年生の時の先生の一言。授業でローマ字が読めなかったら『5年生にもなって、ローマ字が読めないのか!』と言われたそうだ。

「口惜しかったです。今、勉強しないと、人に追いつけなくなる。後で後悔する!今、勉強しなくっちゃ!と思いました」静かな口調でおっしゃった。

そんな話を先日、生徒たちに話したら、一生懸命耳を傾けてくれたと言う。きっと、先生のその一言が子供たちの心に届き、また未来の東海林先生を生むことだろう。

「うちではね、学校のキャリア教育の一環として、5年生がお弁当販売をしてるんですが、それがとーっても美味しいのですよ」

笑顔がとても印象的な石川副校長先生が誇らしげに胸を張って言った。

近くにある東京女子大にアンケート調査をしたり、グループ毎に献立を立てたり、品評会で地域の人や教職員に試食してもらい、色んな人の意見を聞いて作り上げるのだそうだ。

先月、地域のお蕎麦屋さんに協力してもらい120食制作したという。販売は大学で20食。地域で100食。開店20分前から行列で、アッと言う間に完売したそうだ。

井荻小学校の児童はとても元気で人懐こい。お昼休みを利用した豆紙人形の展示では、5年生以下の生徒たちがゾロゾロと見学にやってきた。みんな顔をくっつけるようにして豆紙人形を眺めていた。

低学年の児童も、私たちに色々と質問してくる。ついでに背中に飛びついてよじ登って来たり、「抱っこー!」と飛びついてくる男の子もいる。一番おかしかったのは「ねえ、おばさん、いくつ?いくつ?」と私の歳を聞いてきた子だ。「さあねー、君たちの何倍も生きてるんだよ」と言うと「だから、正確にいくつ?」と知りたがる。

「じゃあ、ジャンケンポン!」とやったら、私が一回で負けてしまった。

「ワーイ、勝った!勝ったんだから教えて!」と言うので、「じゃあ、君だけにね」とこっそり耳打ちすると、「この人ねー、00歳だよー!」と何故か3歳もサバを読んでみんなに教えて回っていたのには笑ってしまった。子供なりに気を遣ってくれたのだろうか?

講演会場に来た6年生の子供たちはもうすぐ中学生だけあって、流石にしっかりした表情だ。地域の人や保護者のための椅子のセッテイングを自主的に手伝ってくれた女の子もいた。

いじめから生まれたメッセージソング「友だちにならない?」の言葉の必要性、「大丈夫、自信を持って!世界中の誰よりもあなたがいい」のテーマ、そして目の不自由な中、88歳から豆紙人形を作り続けた母の話も、小学校を巣立つ自覚を持って真剣な表情で聞いていた。

「もうすぐ卒業、おめでとうございます!」と、最後に心からエールを送った。

生徒や保護者たちが講演会場から姿を消したあと、微笑ましい光景があった。

朗読の伴奏をしてくれた長村美代子さんのハープの傍に若い先生方が集まってきたのだ。

「ハープ、傍で見るの初めてなんです」「ちょっと、触ってみていいですか?」

そしてポロポロポロ〜ンと弦をつまびかせてもらい、まるで少年少女のように瞳を輝かせ歓声をあげていた。思わず私たちの頬も緩んでニコニコ。

全て終わって帰り支度をしているところに、「ああ、間に合った!」と息を弾ませながら駆け寄って来た男性がいた。講演を聴きに来てくださった地域の清水文夫さんである。講演中の私たちの写真や子供たちが真剣な表情で聴いている姿を写真撮影してくださり、すぐ家に帰ってプリントして持ってきてくださったのだ。どの写真も学校用と私たち用と2枚ずつプリントしてある。思いがけないことにびっくりしながらお礼を言うと、「いやあ、いつもこの学校にはお世話になっているから・・」と校長先生のお顔を見ながらにっこり。地域と学校のふれあいの密接な距離がそこにあった。

楽しい時間をくださった井荻小学校の皆様、ありがとうございました。

東海林校長先生、石川副校長先生、全体を指揮してくださった学年主任の渡邉廣子先生、子供たちに「友だちにならない?」を歌唱指導してくださると言ってくださった音楽の坂口美穂子先生、PC操作を手伝ってくださった廣野寛子先生、美味しいお茶を入れてくださった事務の高橋純子さん、そしてPTA会長の高橋裕美さん、お会いできてとても嬉しかったです。

杉並区立井荻小学校の公式サイト


                                                                                                                         
 
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