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学校訪問記 vol. 17 横浜市立都岡中学校

2009年5月29日(金)横浜市立都岡中学校

写真(都岡中学校の先生方と心の宅急便メンバー)右から古川先生、熊谷先生、左から市毛先生、渡邉先生の写真

写真:都岡中学校の先生方と心の宅急便メンバー
(右から古川先生、熊谷先生、左から市毛先生、渡邉先生)

朝から雨がしのつく金曜日、今日の「心の宅急便」は横浜ズーラシア動物園がすぐ傍にある横浜市立都岡中学校である。

綺麗な空気と緑に囲まれ恵まれた環境にある都岡中学校には、今日で四回目の訪問となる。

初回は「心の宅急便」をスタートさせたばかりの2007年、12月3日に、一年生と二年生を対象に講演させていただいた。子供たちにいじめの悲しさと怖さを知ってもらいたい、いじめにあっている子供には、勇気と元気を抱いて前へ進んでもらいたい、その一念だけで始めた「心の宅急便」であったが、その私の想いを最初に受け止め背中を押してくださったのが都岡中学校校長、古川三千代先生であった。

そんなことからこの一年半、「心の宅急便」は古川先生の温かい励ましとアドバイスを受けながら歩いてきた。

二回目は昨年、10月31日。都岡中学校合唱コンクールの日である。

昨夏、「心の宅急便」からメッセージソングが2曲生まれたのだが、そのうちの1曲、「あなたがいい」の歌を都岡中学校が最初に紹介してくれたのだ。ハロウイーンの衣装をつけて、オープニングに元気よく歌ってくれた生徒会役員たちの可愛い姿は、今も脳裏に刻み込まれている。

三回目は、三ヶ月前の3月4日、もうすぐ卒業する三年生に「心の宅急便」を届けた。

これから高校に、社会に新しい世界に向けて羽ばたこうとしている三年生には、生まれた時から盲目の野良猫の一生「野良猫ムーチョ」を朗読し、卒業に向けてのはなむけの言葉としては、私の「落ちこぼれ人生」を披露させてもらった。

特技も取り柄も何もなく、お勉強も大嫌いで、就職試験も落ちまくった私だったが、マスコミ関係の仕事がしたい!作詞家になりたい!という夢を諦めず、その仕事を掴まえ今日があることを話させてもらった。

「夢は諦めずに追いかけて!失敗したら何度でもやり直せばいい」

それが私からの三年生への言葉だった。

さて、四回目の今日は都岡中学校全校生徒を対象とした「心の宅急便」である。一年生と二年生は初めて「心の宅急便」の朗読講演に触れるわけだが、三年生は一年生の時に「あなたがいい」と「手のひらのしあわせ」の朗読講演を聴いている。古川先生には前回と同じいじめのテーマで同じ朗読をして欲しいと頼まれた。

「三年生は一度聴いた話なので、テーマはいじめだとしても、朗読する本は変えた方がいいのでは?」と聞いた私に古川先生はこうおっしゃった。

「小学校を卒業したばかりの中学一年生で聞く話と、最高学年の三年生で聞く話では心の状態もその子の環境も変化して、受け止め方感じ方が違います。それが心の成長なので、同じ話をしてください」

アッと思った。私の中では同じ相手に同じ話をするということにとても「抵抗」があったからだ。それはきっと、私の中の「見栄」の部分だ。同じ話をすればきっと白けられるに違いない、その反応を見たくなかった、そういうことが「抵抗」に繋がっていたのだと思う。

古川先生のその言葉を聞いて、私も覚悟を決めた。もう一度、三年生にも同じ問いかけと同じ話をしよう!初めて接する生徒として。

そして当日の今日、メンバー全員“晴れ女”の「心の宅急便」には珍しく朝から雨!

雨に弱い楽器のハープを気遣って、教務主任で数学担当の渡邉繁先生を筆頭に、英語の小田原誠先生、理科の市毛元先生、三名の先生方が玄関先でハープ奏者の長村さんの車を出迎え、講演会場の体育館までハープを運んでくださったそうだ。

PC操作の原田さんと私は、事情で会場には三十分ほど遅れて着いた。体育館では既に市毛先生がPCからスクリーンに投影するプロジェクターを設置して準備してくださり、展示の豆紙人形もすぐ並べられるように長机が体育館の後方に用意されていた。

メッセージソングを会場に流す役を引き受けてくださったのは保健体育科の小田切敦先生、ビデオ撮影を買って出てくださったのは、英語科の相澤恵先生。

都岡中学校の先生方は即断即行の古川先生のチームだけあってさすがフットワークが素晴らしい。

開始予定の2時。一年生、三年生、そして郊外学習から帰ったばかりの二年生の順に全校生徒が体育館に集まると、それは、それは賑やかだ。

だが、古川先生の始まりの言葉が生徒に向けられると、みんな一斉にシーンとなった。

最初にメッセージソングのCDを流しながら、メッセージソングが生まれた話をした。

「あなたがいい」の歌詞「でもさ」という箇所になると、ちょっとくすぐったいのかドッと笑いが起こるのだが、何故、この歌を作ろうと思ったかを話し出すと、シーンと耳を傾けてくれる。三年生も、二度目の話なのに真剣な顔で聞いてくれていた。勿論、何処の学校でもそうだが、全員が全員という訳には行かない。後ろのほうでゆらゆら揺れている子もいた。だけど、肝心な箇所になると、途端にその動きが止まる。そこで耳と身体を向けてくれるということは、ちゃんと聞いてくれているということだ。この「心の宅急便」をやっていて、「届いた」と思えるこの瞬間、瞬間が、私を次に向かわせてくれる原動力になっている。口には出さないが、いつも「ありがとう!」と私は生徒たちに呼びかけている。

いつもなら、講演の後、校長室で反省会ではないが少しの時間その日の講演について話し合いをしてきた。ところがこの日、古川先生は朝から市外出張で、そこからとんぼ返り、その上近隣の小学校の先生との会合が続いて入っていた。

古川先生がそんな忙しい日に講演日を設定したのには理由があった。都岡中学校へ心の宅急便のメンバーが訪問すると、どうしても校長先生が中心に対応することになる。

今回は教務主任の渡邉先生を中心に、他の先生たちも一緒に校長先生がいないところで、「心の宅急便」と繋がって欲しいと思ったそうだ。「心の宅急便」が児童生徒の心に届くと同時に、指導する先生たち一人一人にも「あなたがいい」「一緒に頑張ろう!」「いつも生徒を本当に丁寧に指導してくれてありがとう!」という気持ちを届けたい、そのためには、校長がいなくても、一人一人の先生たちが主役の「心の宅急便」にしたい!という配慮があったからである。

講演が終わり、特別支援担当の鈴木良子先生と社会科の熊谷有理沙先生に案内されて私たちは講師控え室に向かった。鈴木先生は都岡中学校に来る度にお目にかかっているが、熊谷先生は初めてお会いする。あまりに若々しく可愛いお嬢さんに見えるので、保護者でもないし、先生にも見えないし誰だろう?と思っていたのだが、今春、この都岡中学校の先生になったばかりだそうだ。

「熊谷先生はいいよなあ・・・」

控え室でお茶を頂きながら学校や生徒の話をしている最中、ニコニコしながら渡邉先生が羨ましそうにおっしゃった。

「何故ですか?」と目を丸くする熊谷先生。

「だって、熊谷先生はそのままですーっと生徒たちに受け入れられるじゃないですか。もうね、親しいお姉さん!て感じだもんね。私たちロートルは、生徒たちと年齢の差という壁を埋めるために、これでもかなりの努力をしてるんですよ」

見るからに生徒に慕われそうな優しい笑顔を持つ渡邉先生は、生徒たちが何かあったら素直に心を開いて相談してくれるように、若者の好みや話題を一生懸命勉強するのだそうである。

「キムタクのブレインを見てみたりね。苦手な若者の音楽も聞いてみたりね」

どうしたら彼らの話題についていけるかどうか?どうしたら彼らが抵抗なく「先生、あのね・・」と向こうから相談を持ちかけてくれるかどうか、「僕は不器用なんで、心で接するしかないと思って・・」

昨年は三年生の学年主任だった渡邉先生は、一年生の時からずっと学年通信「まごころ」を発行してきた。

「最初はなかなかちゃんと読んでくれませんでしたが、生徒たちの声を自由に書けるようにしたら、みんなちゃんと読んでくれるようになったんですよ。生徒も仲間の声は耳を傾けるし、簡単に捨てたりしないので」

生徒たちが何か辛いことに遭い、落ち込んでいる時、渡邉先生はこんなことを言って励ますそうだ。

「チューリップも冬の辛さを通り越さないと綺麗な花を咲かせない。それと同じだよ」

三年間、生徒との心の交流を続けてきた自信と満足感が、渡邉先生の最高の笑顔に浮かんで来る。「心の宅急便」では、まだ手探りで歩いている私にとってもその言葉は心に響くものだった。

古川先生、渡邉先生、そしてお手伝いくださった先生方、「心の宅急便」を聞いてくれた生徒の皆さん、ありがとうございました。何度でも、都岡中学校には訪れさせてください。そして 色々教えてください。

「さようなら」ではなく、「また 会う日まで!」

2007年12月03日(月) 学校訪問記 Vol. 03 「横浜市立都岡中学校」
2008年10月31日(金) 学校訪問記 Vol. 07 都岡中学校「合唱コンクール」

横浜市立都岡中学校の公式サイト


                                                                                                                         
 
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