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2010年6月2日(水) John Stanford International School

2010年6月2日(水)John Stanford International School

J・スタンフォード国際小学校近景

J・スタンフォード国際小学校近景

J・スタンフォード国際小学校近景

■「イマージョン教育の成果」

「算数や理科を日本語で半日授業を受けるイマージョン教育を取り入れているJ・スタンフォード インターナショナルスクールで、ムトーさんの朗読講演をやってくれませんか?」
そんなメールが在シアトル日本国総領事館、藤森昭裕領事から舞い込んだのは4月の終わり頃であった。
この学校は公立の学校であるにも関わらず、ユニークな教育を取り入れていて、幼稚園から5年生まで日本語かスペイン語かどちらかの言語のクラスに入っており、一日の半分をその言語で、主に算数や理科を勉強し、残りの半分を英語で受けている。
「日本語で算数と理科の授業を受ける?小学生にそんなことが出来るの?」とびっくり。
準備期間が一ヶ月を切る中でのお申し出だったので、英語での講演なら辞退するしかないと思ったのだが、「あそこの生徒は日本語での講演で全く大丈夫です」と藤森領事、安心して引き受けることにした。

明るく楽しい廊下

明るく楽しい廊下

明るく楽しい廊下

廊下の突き当たり「和の空間」(障子の中に三畳間)

廊下の突き当たり「和の空間」(障子の中に三畳間)

ただ、どの程度の日本語の理解力があるのか一抹の不安があり、担任の貴子レッキンジャー先生にメールで訊ねたところ、「今回5年生のクラスと3年生のクラス、50名の授業で講演していただくのですが、5年生はかなり理解力も喋ることも進んでいますが、3年生は年齢的にも学習した時間的にもまだ全部日本語での講演を聞き取るのは難しいです」とのこと。うわー!参った!!どうしよう?

「あなたがいい」の朗読部分はスクリーンに英訳のテロップを流すので理解してもらえると思うが、講演のテーマ「いじめ」についての話の部分までスクリーンに英訳を流す準備をするのは今からでは時間的に難しい。通訳を入れれば簡単な話だが、イングルモア高校の特別講演枠(75分間)と違って、スタンフォード小学校では講演時間が授業枠の中の30分間しかない。この時間枠の中で通訳を入れたら時間が二倍、伝えたいことが半分になる。どうすればいいだろう?!
中学生からずーっと英語教育を受けている私たち大人だって、英語で講演なんかされたら少しも内容が聞き取れない。その反対バージョンで、しかも日本語を習い始めたばかりの小学生に、ただでさえ早口の私の日本語が聞き取れるわけがない。でも、引き受けたからにはなんとかして全員に伝えられる形の講演にしなくては・・!
英語は苦手だが、下手でも外人の話す日本語よりはマシだろう・・・そう思い、清水の舞台から飛び降りる覚悟で 恥も見栄も捨てて英語バージョンの原稿を作って行ったのだが・・・!
なんと貴子レッキンジャー先生は、私よりもっと早口の鉄砲玉のようなスピードで日本語を話す先生だった。相手がアメリカ人だから、相手が小学生だからスピードを緩めるなんてことは一切せず、全く日本人の生徒を相手にするように自然な日本語で授業を行っているのである。
「どうして 生徒たちは貴子先生のスピードの日本語についていけるのですか?」
貴子先生の質問にちゃんと答えている生徒たちに感嘆して私は訊いた。
「うーん、そうですね。もう容赦なく日本語漬けにして慣らすんです」とにっこり爽やかな白い歯を見せて貴子先生は笑った。

授業風景

授業風景

貴子先生と

貴子先生と

「僕も最初、この授業を見た時は、そりゃあもうびっくり仰天しました」と藤森領事。
「外人の顔をした子供たちがぺらぺら日本語を喋っているのですから」

宮崎駿を日本語で検索する少女

宮崎駿を日本語で検索する少女

パソコンを使用する生徒たちが日本語で宮崎駿の検索をしている姿にもただただため息!
「トトロ」の「まっくろくろすけ」を指して、「これは何を「意味するものですか?」と滑らかな日本語で聞いてくれた5年生の女の子は、教室の隅に展示した母の作品、豆紙人形を見た後、「貴女の作品は素晴らしいと感動しました」とまで言ってくれた。
「ごめんなさい。これは私が作ったものじゃないの。母なの」と応えたら、「そうですか。間違えてごめんなさい。でも、お母さん、こんな小さなお人形を作れて素晴らしいです。貴女は着物がとてもよくお似合いです」と恥ずかしそうに言う。
ウワーッ!貴女の方が何倍も素晴らしいよ!
ここまで流暢に日本語が話せる子供たちの前で、私の稚拙な英語は全く必要ないじゃない?!と思ったのだが、「まだ理解が深くない3年生に合わせていただけたら・・」と貴子先生の言葉に覚悟を決めた。エイ、仕方ない!やるか!

講演風景

講演風景

知性が高いせいか5年生は大人びた表情の子供が多かったが、講演の中で「友だちにならない?」の歌のCDをかけた時、「タイトルは Will you be my friend? 」と言うと、即座に「Sure! I’ll be your friend!]と口々に返してくる。事前に貴子先生がCDを聴かせてくれていたせいもあるのだろうが、歌にあわせて楽しげに肩を組み、身体をゆすってリズムを取って聴いている。いじめに遭った女の子の話から「みんなも、一人ぼっちで淋しい時に友だちにならない?て声をかけられたら、とっても嬉しいよね?だから そんな子がいたら言ってあげようね」と語りかけると、ウンウンと真剣なまなざしで大きく頷いて賛意を表現してくれる。感情に素直でそのまま気持ちを伝えてくれる子供たち。このスタンフォード小学校の生徒と横浜の川井小学校との今後の交流の橋渡しも、今回の私の役目の一つである。
この子達と、素朴で元気で明るい川井小学校の子供たちとなら、きっとうまく行く!
私はそう信じた。

J・スタンフォード インターナショナル スクールの公式サイト


                                                                                                                         
 
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