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学校訪問記 vol. 07 横浜市立都岡中学校「合唱コンクール」

2008年10月31日(金)横浜市立都岡中学校「合唱コンクール」

秋もたけなわ、急に空が青く高く感じられ、街路樹が色づき始めた10月のラストデイ・31日、横浜市立都岡中学校では毎年恒例の合唱コンクールが開催された。
都岡中学校は「心の宅急便」を支援してくださり、歩く道をつけてくださった古川三千代先生が校長をなさっている学校で、私たちは昨年の12月に「心の宅急便」で訪れている。その都岡中学校本年度合唱コンクールに「心の宅急便」のメンバーは招かれて行った。
 実は 今日の合唱コンクールのオープニングに、都岡中学校生徒会実行委員会の生徒たち18名が、この夏、「心の宅急便」から生まれたばかりのメッセージソング「あなたがいい」を歌ってくれるのだ。

合唱コンクール実行委員、全学年、各クラスから二名代表、計18名の生徒が「あなたがいい」を合唱コンクールのオープニングで歌ってくれることが決まったのは、二学期が始まったばかりの9月初旬だった。合唱コンクール実行委員会から生徒たちへのビッグサプライズとして企画してくれたのだ。
ちょっと動いただけで汗が吹き出る9月半ば、「あなたがいい」第一回練習日に私は見学をさせてもらいに都岡中学校を訪れた。
生徒たちを束ねて歌唱指導してくださる先生は、英語の先生で生徒会を担当なさっている小田原誠先生と音楽の阿部千夏先生だ。
マコト先生は、ジャニーズのアイドルタレントを彷彿とさせる若く爽やかなイケメン先生、プライベートでは友人たちとバンドもやっているとあって、話の分かるお兄さんのような雰囲気が生徒たちを魅了している。
一方、チナツ先生は 女子大生のようにピチピチプリプリと可愛い先生。マコト先生がお兄さんなら、チナツ先生は歳が近いお姉さんのような存在だ。
先生と生徒たちの間に心の壁がないことは、練習している生徒たちの弾けんばかりの笑顔が証明していた。

生徒たちの練習風景

初顔合わせ一回目の練習ではまだ譜面と歌詞を追うので精一杯だったが、さすが音楽世代の中学生、二回目三回目と進むうちにどんどん合唱が上手くなる。
「でもさ」という歌詞のところでは、全員、さっと右手を出すリアクションをしてくれたりして、歌いながら照れているところが又初々しく可愛らしい。
聴いている私も古川先生も 生徒たちの進歩に驚いたり感動したり・・・!終わった時は夢中で拍手をしていた。
あの練習の日から一ヵ月半、「あなたがいい」の歌はどんな風になっているのだろう?
10月31日、 合唱コンクール当日、今日は心の宅急便のいつものスタッフ以外に二人のメンバーが一緒に同行した。
一人は「あなたがいい」の作曲家・丹羽応樹さん。もう一人は、音楽関係のAさんである。Aさんは、今、中学生がどんな音楽に興味があるのか?どんな歌を歌うのか?興味と関心を持って都岡中学の合唱コンクールを聞きに来てくれたのだ。
 午前10時スタートの最後の追い込みで、都岡中学の朝の教室はどの窓からも美しい歌声が流れてくる。
「聴いてやってください。この日、この時が一番美しい素晴らしい状態です。この日まで必死で練習してきた生徒たちが最後の仕上げに励んでいる歌声なんです」と古川先生が私たちに説明してくれた。

ハロウイーンのイラスト(あさこ)

10月31日はハロウイーンの日、講堂の舞台にはカボチャのイラストが描かれた「合唱コンクール」の大きな看板が舞台上部に飾られている。
「皆さん、後ろのドアをご注目ください!」と司会の生徒の紹介で生徒が一斉に後ろを見ると、ドッと大きな笑いと拍手と歓声が沸きあがった。
最後部のドアを開いて出てきたのは 思い思いのハロウイーンの衣装をつけた合唱コンクール実行委員会の生徒18名だった。魔法使いの黒いとんがり帽子を被った子あり。何やら不気味な仮面をつけた子あり、ポンキッキの着ぐるみを着た子あり・・・
全校生徒の大歓声に包まれ見守られる中、恥ずかしそうに顔を隠したり、手を振りながら18名の生徒が舞台に向かって駆け上がる。そして合唱コンクール開会の宣言のオープニングセレモニーの中で「あなたがいい」は歌われた。

(写真)ハロウイーンの衣装で「行くぞ!」

ハロウイーンの衣装で「行くぞ!」

(写真)衣装のままで「あなたがいい」の合唱風景

衣装のままで「あなたがいい」の合唱風景

合唱コンクールは 学年ごとにクラス対抗で一番を競い合う大事なイベントだ。その練習に1分1秒でも惜しい中、又、合唱コンクール実行委員としての仕事の忙しい中を時間を割いて練習して歌ってくれた生徒たち、聴いているだけで胸が一杯になってしまった。

ななみ、みさと、さよ、さやか、ほのか、もも、みさと、ひかり、まりな、あんな、
たつま、ともみ、からっていー、さき、みなみ、やまは、ゆい、みおか、アリガトー!

自由闊達な楽しいオープニングで始まった合唱コンクールは、プログラムが本番に入った途端にがらりと雰囲気が変わった。
緊張感に満ちた表情、きりりとした制服姿、真っ直ぐな姿勢で歌う生徒たちの姿には、ついさっきまでリラックスして笑いさざめいていた幼さのかけらもない。
真剣な顔で指揮者に向かって心を一つにして歌う合唱、心が合わなければ声も一つには成りえない合唱、それだけで素晴らしい!
午前の部は一年生と二年生、午後の部は三年生、それぞれが学年ごとに生徒代表と先生方が審査員となって採点をする。
各学年の課題曲は 一年生が「この星に生まれて」、二年生が「マイ バラード」三年生が「旅立ちの日に」、そして自由曲は各クラスがそれぞれ選んで歌うのだ。
みんな上手い!一年生なんて、ちょっと前まで小学生だったなんて思えないほど上手い!これじゃあ、二年生は追い上げられて辛いな・・・と思いきや、そこは一年経った貫禄で、やはり、二年生もちゃんと差をつけて上手い!小泉首相じゃないが「感動した!」と思わず叫びたくなってしまう。
そして、「三年生は 中学での集大成です。別格です。ぜひ、一年生から三年生までの歩みと成長を感じて聴いて欲しいです」古川先生の言葉通り、ほんとに素晴らしい歌声だった。

もう一つ感動したことがある。「ここにこんないい歌がある!」と言うことを知ったことだった。世の中でヒットソングとして出回っていないから知らない歌が半分くらいだったが、言葉といいメロデイーといい素晴らしい!この歌を合唱コンクールという学校の行事で子供たちが真剣に歌い練習することは「心を育てる」と言う意味に於いて、どんな教育より効果的なのではないか?と思えるくらいだ。こういう歌を歌って育った子が成長して大人になる、なんて頼もしい素敵な未来なんだろう!日本は捨てたもんじゃない!

午後の部に入る前のお昼休み、校長室でAさんがしみじみとため息をついた。
「僕、こんな学校で、古川先生の下で勉強したかったなあー!感動しました!!」
午前の部最後に、この感動のお礼に飛び入りで「あなたがいい」を歌ってくれた丹羽さんも「子供たちのあの伸びやかさ、そして真剣さ、音楽性の高さ、素敵でした。うーん、いい学校だなあ・・・!」と感嘆の声をあげる。

(写真)丹羽さんが舞台で歌っているところ

丹羽さんが舞台で歌っているところ

私たち「心の宅急便」メンバーは昨年も来ているので、この学校の生徒たちの明るさと素晴らしさは知っているが、客席から感じさせてもらう感動はひとしおだ。

いよいよ午後の部が終わって 最後の審判がくだされる瞬間、「一位は!」と司会が読み上げると同時に一位のイントロが流される。そのイントロの一音で生徒たちは自分たちのクラスの歌を知り「ウオー!!」という歓声と拍手がうねりのように沸きあがり、そのクラスの生徒たちは互いに抱き合って飛び上がる。中には滂沱の涙を流している生徒もいる。
その光景の美しさ、純粋さ、青春、勝った者も負けた者も、思い切り戦ったあとの感動に浸っている。見ているだけで私たちも涙が出そうになった。

全てのプログラムが終わった後は暮れなずむ校庭でグランドフィナーレだ。
ズーラシア動物園に隣接する緑に囲まれた広い都岡中学校の校庭で、本格的に仕掛け花火花火を打ち上げるのだ。生徒を喜ばすことだったらなんでもやるぞ!の先生達の企画だ。
外に出ると、いつの間にか校庭に仕掛け花火のセットが作られていた。
校庭を見下ろす場所で花火が始まるのを待っていた私たちの耳に「あなたに〜贈りたい〜言葉があります〜?  誰よりも誰よりもあなたがいい〜♪」と歌声が聞こえてきた。
「エッ?」と思って声のする方を見ると、3年生の女の子たちが4、5名、こちらに向かって手を差し出して歌ってくれている。
なんて可愛い憎いことをやってくれるんだろう!
「あなたに〜 贈りたい〜言葉があります〜 世界中の誰よりもあなたがいい〜♪」
私も心をこめて彼女たちに歌い返していた。

横浜市立都岡中学校の公式サイト


                                                                                                                         
 
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